2026/07/21 19:00
2026年4月~7月、全国13か所で開催された【女王蜂 全国ホールツアー2026「PERSONAL DISTANCE」】。今年2月にリリースされたシングル「PERSONAL」を含むセットリストとなっており、狂騒のダンスチューンからダークな心情をのせたバラードまで、シームレスかつドラマティックな構成の中で彼女たちの持ち味が存分に発揮されたステージとなった。そのツアー最終日、東京・東京ガーデンシアターでの模様をレポートする。
自身と他者との心理的な距離感を意味する「PERSONAL DISTANCE」というツアータイトルを聞いたとき、「まさに女王蜂的!」と納得したのは私だけではないだろう。侵されるべきでない個人の領域や思考を尊重しながら、ライブでは絶対的な、密なる一体感を追い求めていく――それは一見、矛盾するような試みであるが、そこで生まれる複雑な感情や“もがき”を含めて音楽へと昇華してきたのが女王蜂というバンドである。その点においてもじつに示唆に富んだネーミングだと思えたし、彼女たちの哲学がしっかりと刻まれたものとして受け止めることができた。
この日の東京ガーデンシアターも、女王蜂のライブでは欠かせないジュリ扇を大多数が携帯する一方、思い思いのファッションを身に纏った観客たちが集結。年齢や性別も含めて実に多様だが、ライブへの強い期待感は一様に感じられ、そこに華やかさが宿っている。この日も早見優やヒプノシスマイク、SOUL'd OUTなど歌謡曲~J-POPを軽やかに横断するBGMで会場をひと踊りさせたあと、客電が落とされ、緊張感をもって開幕。静謐なピアノのメロディに導かれる形で、黒を基調とした衣装のやしちゃん(Ba.)、ひばりくん(Gt.)、サポートメンバーのながしまみのり(Key.)、山口美代子(Dr.)が現れ、最後にアヴちゃん(Vo.)が登場する。冒頭、シンプルな照明の中で披露されたのは、ブルージーな音色のギターが彩る「PERSONAL」。丁寧に言葉を紡ぐ抑制的な歌唱が魅力のミディアムバラードであるが、その声と鳴らされる音とのスリリングなせめぎ合いにより、すぐさま東京ガーデンシアターを女王蜂の世界へ染め上げていく。続いてアヴちゃんにピンスポットがあたり、「雛市」に。赤い照明も交えた官能と悲哀の中で、〈強く 強く生きてゆかなきゃ〉の言葉が響く。このようなシリアスかつ重厚なはじまりでも観客を惹き付けることができるのは、アヴちゃんのカリスマティックな存在感、そして鉄壁の演奏が成せる業である。
強烈なビートがバンドの演奏に重なる「火炎」からは怒涛のダンスパート。同曲のサビでは波のようにジュリ扇が前後左右に大きく揺れる。さらにディスコティックなギター・サウンドの「金星」になだれ込むと、アヴちゃんが観客に手拍子を求めて会場は一気にヒートアップ。客席を隅々まで指差しながら〈さみしいから今日は 帰さない〉と歌う彼女の言葉に嘘は感じられない。サビ終わりの「STOP!」でブレイクしたのも束の間、「デスコ」へと鮮やかなるスイッチ。極彩色の照明の中で、単なる祝祭空間ではなく、愛も憎も入り混じった混沌のパーティーとして勢いが増していく。「まだまだ行くで」との言葉通り、「首のない天使」でも「東京~!」「どうもこんばんは、女王蜂です!」と煽り、それに観客も歓声とジュリ扇で呼応する。グラマラスなロック「ヴィーナス」ではひばりくんのギターソロもフィーチャーされ、早くもピークタイムを演出。フィンガースナップが印象的な「催眠術」、ダブ・ステップのビート感が頭と身体を揺らす「BL」では、より妖しげで陶酔的なムードの中へと観客を誘っていく。ノンストップで展開していくその完成度の高いパフォーマンスはもはや呪術的とも言えるほどで、いつ見ても新鮮な驚きがあり、止まらぬ進化を示していた。
中盤、「SAILOR」で文字通り新たな航路へと舵を切ると、スカ・テイストの小気味よいリズムに日本語と歌謡曲的な情感をのせた「しゅらしゅしゅしゅ」を演奏。女王蜂としての色を失わずに繰り出されるサウンドの幅広さを改めて実感する。生演奏とストリングスの濃厚な絡み合いが美しい「夜曲」ではアヴちゃんが衣装チェンジ。鮮やかなマリンブルーの挿し色が入った白~ベージュのドレスに着替えたアヴちゃんは、「バイオレンス」で乱舞する。続く「心中デイト」ではアヴちゃんのみをステージに残してメンバーたちも同系統の衣装にチェンジし、ライブ後半への道筋を立てる。
メンバーのスタイリングが明るくなったこともあり、このまま“陽”の彼女たちが紐解かれていくのかと予想していたが、ここから披露されたのは、「売春」「先生」「回春」という、ほの暗い青春と恍惚の証とも言うべき3曲。楽曲内で描かれた、禁忌の関係だからこそ産み落とされる危うくも純粋なエモーションを掘り下げた物語は、何事も白黒をはっきりと付けたがる現代において稀有なメッセージとなり観客側にも届けられた。
また、それら3曲を自己の性(さが)に投影したと言っても過言ではないこの日の「FLAT」は破格だった。楽曲内で〈平坦な戦場〉と表現された通り、気を抜くと社会の激流に飲み込まれ、思考の硬直化を余儀なくされる状況下でどう生きていくのか。大勢の観客の注目を集めながら、個を殺さず祈るように歌うアヴちゃんの凛とした姿そのものが、ひとつの答えを示しているようであった。
さらに歌われたのが、「PERSONAL」のカップリングとしてリリースされた「HELTZ」。アヴちゃんの私信とも読める歌詞が話題となった一曲で、痛みや悲しみを抱えながらも次の一歩を歩み出す決意と、改めて人と繋がろうとする意志が滲み、終盤のハイライトを生み出していた。そして代表曲と言える「メフィスト」、「Serenade」という、ホイッスル・ボイスを駆使したアヴちゃんのボーカリストとしての圧倒的な技量と、表現者としての燃え滾る魂が融合した2曲を全力で歌い上げ、終幕。舞台から名残惜しそうに去るアヴちゃんの姿は目に焼き付いている。
照明とスモーク以外による演出効果以外は、メンバーのみのパフォーマンスで成立させていた今回の女王蜂。映像やアンコールなしでも観客と繋がることができるのを改めて証明したライブであり、活動休止からの回復期と言えた昨年の活動を経て、より確実な前進がうかがえるステージとなっていた。ライブ終了直後には、新曲「星」のミュージックビデオと、同名の新たな全国ツアー情報が解禁。ファンは歓喜に沸いていた。
時代やシーンの在り方が変わる中で、たとえ追い込まれることになっても、女王蜂は他者を思いやり、自分を愛することを訴え続けてきた。その上で極限の一体感を得ようとする彼女たちの終わりなき旅は、まだまだはじまったばかりである。
Text:Itsuki Mori
Photo:森好弘
◎公演情報
【女王蜂 全国ホールツアー2026「PERSONAL DISTANCE」】
2026年7月10日(金) 東京・東京ガーデンシアター
関連記事
最新News
関連商品
アクセスランキング
1
映画『Michael/マイケル』応援上映のレポート到着、総立ち&「マイケル!」コールの大歓声 “追いマイケル”で16回鑑賞という強者も
2
【ビルボード】FRUITS ZIPPER『ぱわーオブらぶ / センセーション』72.7万枚でシングル1位、自己最多初週セールスを記録
3
<ライブレポート>Suchmos エネルギッシュでグルーヴィーな演奏で対バンツアー閉幕 Fujii Kazeとステージコラボも
4
【ビルボード】剣持刀也『Augment』8.8万枚でアルバムセールス首位 YEONJUN/A.B.C-Zが続く
5
上白石萌音のニューアルバム『bouquet』、根本 要(スターダスト☆レビュー)/絢香が楽曲提供
インタビュー・タイムマシン
注目の画像







女王蜂、新曲「星」MV公開 全国ツアー【星】で全国5か所へ
女王蜂、アニメ『天幕のジャードゥーガル』EDテーマを担当
女王蜂、単独公演【蜂月蜂日~サスペンス~】開催決定
女王蜂、ロンドン&パリにて【QUEEN BEE LIVE】開催
<ライブレポート>女王蜂 聖なる産声がもたらす独壇場――単独公演【アヴちゃん聖誕祭2025~GAL GAL GAL~】
















